デイサービスの入浴に、社会実装版(ミラブル アシストバス・145万円 税別/159万5,000円 税込)は入るのか。

大手通所介護事業者で入浴介助にあたってきた方に、聞きました。答えは「いまある機械浴の置き換えにはならない」。見込みがあるのは、新しく作る事業所です(取材をもとにした編集部の見立て)。

この記事の結論
  • 機械浴の置き換えにはならない、というのが取材した方の見方です。機械浴を使うのは、座ったままの姿勢を保つのが難しい方だからです
  • 入る見込みがあるのは、新しく作る事業所です(取材でただ1つ挙がった可能性)
  • 強みは、またがずに、湯に浸かれること。一般浴・個浴の枠での強みです
  • 取材した1人の方のお話です。「介護保険施設では一般浴・個浴の扱い」という話の制度の裏づけは、まだ確かめられていません(まだ分からないこと)

30人定員のデイサービスで、お風呂に入るのは15人ほどです。1人にかかる時間は、10分〜20分です。

この記事の順番

人間洗濯機 介護|取材の中身を読む順番。1 デイサービスの入浴の現場 2 危ないのは何か 3 職員の体 4 人間洗濯機はどう見えるか 5 社会実装版はどこに入るか 6 まだ分からないこと(イラスト)

定員30人のうち、お風呂に入るのは15人

まず、現場の規模感から聞きました。

30人定員のデイサービスですが、実際入浴する方は15名程度。浴室の職員2名、着脱室に看護師1名です。利用者数が少ない時は、さらに1名減り、多い時は1名増やしています。

時間はこうです。

▼ 入浴の種類・一人あたりの所要時間

入浴の種類一人あたりの所要時間
一般浴10分〜20分程度
機械浴だいたい15分程度

※「浴室に入って体を洗って、浴槽に浸かって出るまで」の時間として聞いたものです。

3人で、午前中に15人。この数字を頭に置いてから先を読むと、あとの話がすべてつながります。

カタログと現場の結果は分かれた

導入していたのは酒井医療の「カトレア」とオージー技研の「トゥッティ」。この2機種について、メーカーが公式サイトに書いている機能を1つずつ読み上げて、現場で本当にそうなっているかを聞きました。結果は、はっきり分かれました。

取材先が導入している機器は、カトレアとトゥッティです。

入浴機器のカタログには、介助が楽になる機能がいくつも書かれています。実際どうなのか。

カトレア:臀部を1人で洗えてはいなかった

カトレアの売りは、入浴用車椅子がフルリクライニングすることで「臀部の洗身が1人で行えます」という点です(酒井医療の製品ページ)。

同社サイトの記載で、入浴用車椅子BWC-160のみとの注記つきです。

実際にできていたか、聞きました。

できていません。仰臥位が自力で保持できる方であれば可能かもしれませんが、実際にリクライニング式のシャワーチェアを使用するADLレベルの方は、仰臥位の保持自体が難しいことがほとんどです。

実際には、一人の職員が横向き姿勢を支え、その間にもう一人が臀部を洗浄するという形か、車椅子からシャワーチェアに移乗する際に、スタッフが抱えた状態でささっと臀部を洗ってからシャワーチェアに乗せる、という流れが一般的でした。

機械の性能の話ではなく、その機械を使う人がどういう状態か、という話でした。

フルリクライニングの浴槽を使う方は、そもそも仰向けの姿勢を自分で保てない。だから結局、人が支える。

トゥッティ:体感は秒数より待ち方で決まる

オージー技研のトゥッティは、給湯/排水時間 1分/1分です(オージー技研の仕様書)。

170cm・65kg入浴時、適正水位の条件つきの数字です。

待ち時間はどう感じていたか。

カトレアと大差無いと思います。待ち時間は主にお湯を張っている間に生まれますが、新型のカトレアは両肩付近にシャワーが設置されており、お湯が溜まる間もシャワーが出るため、寒さを感じにくくなっていると思いました。

秒数そのものより、その1分をどう過ごしてもらうかのほうが、現場の体感を決めていました。

湯が溜まるあいだ、裸で待つ人がいる。肩にシャワーが当たっているかどうかで、その1分の意味が変わる。

人間洗濯機 介護|機械浴トゥッティに座ったまま入る様子(メーカーの動画)

▶ 取材で名前が出たトゥッティが、車いすのような搬送車ごと浴槽にドッキングして入る様子を、メーカーの動画で見られます。
動画:オージーウエルネス(オージー技研)=メーカー公式(YouTube)。押すと再生します

危ないのは、機械そのものではなかった

操作の習熟については、あっさりした答えでした。

操作自体は1日で覚えられると思います。利用者に合わせた対応も絡んでくるので、それを覚えるには1ヶ月ほど時間がかかります。

機械は1日、人は1か月。そのうえで、ヒヤリとした経験を聞きました。

シャワーチェアのストッパーの不具合で車椅子が動いてしまい、ずり落ちそうになったことがあります。また、トゥッティ・カトレアいずれでも起こり得ることですが、小柄な方はベルトをしていても体が浮いてしまうため、お腹の上におもり型の枕を乗せて対応していました。

入浴は、急激な血圧変動など急変が起きやすい場面です。入浴中に意識消失し、浴槽に顔が落ちてしまうといった危険性もあり、常に声掛け・見守りが必要です。

小柄な方の体が浮くので、お腹におもりの枕を乗せる。カタログには出てこない工夫です。

そしてこれは、機械の欠陥というより、体格の幅に対して機械が1種類しかないことから来ています。

職員の体は、全員が痛めている

程度の差はあれ、スタッフ全員が腰痛を抱えていたと思います。日常的に腰ベルトを巻いて業務にあたっています。業務中に悪化した場合は、もちろん労災の扱いになります。

「入浴介助は職員の負担が大きい」とは、当サイトも書いてきました。

ただ、全員が腰ベルトを巻いて働いているという具体は、書けていませんでした。

入浴が難しい場面についても聞きました。

認知症状が重度で、衛生状態の悪化がひどく、ご本人の同意を得るのが難しい中でも入浴が必要な状況があり、複数名のスタッフで慎重に対応にあたったことがあります。その際に職員が怪我をし、労災の扱いとなったこともありました。以降、防護のために強力なゴム手袋を購入するなど、安全対策にも気を配るようにしていました。

入浴は、清潔を保つために必要です。でも、入りたくない人を入れることでもある。

その難しさが、職員の怪我という形で出ることがある。

ここは、機械の性能でどうにかなる部分と、ならない部分が混じっています。

「機械浴は怖がられる」は、思い込みだった

機械浴は「怖い」「抵抗がある」と思われている、と書いたことがあります。聞いてみると、違いました。

機械浴を嫌がる利用者はあまりいませんでした。拒否するかどうかを判断できるだけの認知機能がすでに無い方と、機械浴になっても「絶対に入浴したい」という意欲が強い方とで、二極化していたように思います。一般浴での拒否は日常茶飯事です。

拒否が起きるのは、むしろ一般浴のほうだ、と。

毎日の掃除は20分、壊れたらシャワー浴

機械浴そのものの清掃は、20分くらいです。故障はあります。程度によりだましだまし使える場合と、全く動かない場合とあります。全く動かない場合は、シャワーチェアに移乗でシャワー浴のみの実施に切り替えます。

止まった日は、湯船をあきらめてシャワーにする。代替機はないという前提で回っています。

現場の見方:機械浴の代わりにはならない

まず、当サイトが「介護施設向けの本命」として紹介してきた社会実装版(ミラブル アシストバス・159万5,000円 税込)について聞きました。

機械浴の更新候補になり得るか、です。

既存のデイサービスで機械浴を入れ替える場合、多くは同じメーカーの新型機種に更新すると思います。これはスタッフが新たに操作を覚える負担を軽くするため、また利用者自身の戸惑いを軽減するためです。

社会実装型の人間洗濯機は、介護保険施設においては「一般浴・個浴」の扱いにしかなりません。このため、機械浴の代替になることは物理的に不可能です。

また、デイサービスでは大浴槽の一般浴のほかに、家庭の浴槽のように個浴を備えている施設もありますが、そもそも個浴を入れ替えるというのは、浴槽自体が大きく破損するといった事情がない限り想定しにくいです。

導入され得る施設として考えられるのは、「新規事業所」だと思います。

整理すると、次のとおり。

▼ 機械浴(特殊浴槽)・ミラブル アシストバス

機械浴(特殊浴槽)ミラブル アシストバス
入り方シャワーチェアやストレッチャーに乗せたまま浴槽に扉があり、またがずに入って浸かる
(メーカー公式サイトの記載)
使う方座位の保持が難しい方・寝たきりの方対象者のADLの目安は、まだありません
更新候補になるか—現場経験者の見方は「代替にはならない」

予算の枠は近くても、使う方が違います。

☞145万円の「社会実装版」とは?スペックと介護現場での使い方/機械浴槽(特浴)の買い替え費用と新しい選択肢

浸からないアラエルはデイには合わない

(アラエルは)国際福祉機器展で展示物を見ました。自分の施設で選べるなら、導入したかったです。しかし、浴槽に浸かるタイプでないので、「お湯に浸かりたい」と思っている利用者が多いデイサービスには向かないなと思いました。特別養護老人ホームでの導入は正解でしょう。

良い機械かどうかではなく、その施設に来る人が何を求めているかで決まる。デイサービスに来る方は、湯に浸かりたい。

だから浸からない装置は合わない。特養なら話が変わる。

サイエンスの泡はアラエルで介護現場に

この「アラエル」について、取材のあとに製品情報を確認しました。そこに、こう書かれていました。

※ウルトラファインバブル機能は、株式会社サイエンスの製品を使用しています。
(酒井医療株式会社 公式サイト「シャワーポッド アラエル」製品ページ/確認日 2026年8月18日)

アラエルは、酒井医療の製品です。そこに、サイエンスのウルトラファインバブル機能が載っています。

同社のコラムにも、使い分けが書かれていました。

▼ 泡の種類・搭載している製品(酒井医療)

泡の種類搭載している製品(酒井医療)
マイクロバブル(1μm以上100μm未満)仰臥位浴槽リクシー/座位浴槽ライラックプラス
ウルトラファインバブル(1μm未満)座位シャワー浴槽アラエル

ウルトラファインバブルは業界共通の分類名

「ウルトラファインバブル」は、サイエンス固有の呼び名ではありません。酒井医療のページにも、こう注記されています。

※「ファインバブル」「ウルトラファインバブル」は一般社団法人ファインバブル産業会の登録商標です。

1μm未満の泡を指す業界共通の分類名になります。

ですから「ウルトラファインバブルと書いてあるからサイエンス製」ということにはなりません。

今回のポイントは、酒井医療の製品ページに「株式会社サイエンスの製品を使用しています」と、社名入りで書かれていることです。

人間洗濯機 介護|サイエンスの泡と分かる書き方。「ウルトラファインバブル」とだけならサイエンス製とは限らない、社名入りならサイエンスの泡が載っている(図)

整理すると、こうなります。

人間洗濯機という「箱」は、まだ介護の現場に入っていません。けれど、サイエンスの「泡」は、もう入っています。

それも、機械浴で国内大手のメーカーの製品に載る形で。

そして——取材協力者が「自分の施設で選べるなら、導入したかった」と話したのが、その機械でした。

で、うちの施設の浴室に、あの機械は入るの?入らないの?

人間洗濯機
編集部

いまある機械浴の置き換えには、向きません。

見込みがあるのは、新しく作る事業所です(取材をもとにした当サイトの見立て)。

見込みがあるのは新しく作る事業所

ここまでは、お話しいただいたことをそのまま書きました。ここから先は当サイトの見立てです。取材協力者がそう言ったわけではありません。

話を整理すると、機械は「良いか悪いか」では選ばれていませんでした。決まっていたのは、この3つです。

  1. 誰が入るのか(座位を保てるかどうか)
  2. その人が何を求めているか(湯に浸かりたいのか、洗えればいいのか)
  3. いつ入れ替えるのか(既存の更新か、新設か)

この3つに沿って、社会実装版(ミラブル アシストバス)について取材で聞いたことを、場面ごとに並べます。

▼ 場面・取材で聞いたこと

場面取材で聞いたこと
既存デイの機械浴機械浴を使うのは、座った姿勢を保つのが難しい方
既存デイの一般浴・個浴の入れ替え「浴槽が大きく破損するといった事情がない限り想定しにくい」
新規事業所取材協力者が、入る場面として挙げたのはここだけ
特別養護老人ホームこの取材では聞いていない

そして1つ、はっきりしたことがあります。この機械は「浸かれる」ということです。

アラエルがデイサービスに向かない理由が「浸からないから」だとすれば、浸かれることは、デイサービスにおいては弱点ではなく強みになります。

ただしそれは、機械浴の枠での強みではありません。一般浴・個浴の枠で、「またがずに、湯に浸かれる」という強みです。

当サイトは、この機械を「機械浴の更新候補」として紹介していました。

泡だけ他社の機械に載せる道もある

ここまでは「人間洗濯機という箱を、どこに置くか」の話でした。

けれどアラエルの件が示しているのは、それとは別の入り方です。

▼ 箱ごと入れる道・泡だけ載せる道

箱ごと入れる道泡だけ載せる道
形ミラブル アシストバスを導入する他社の入浴機器に、サイエンスのユニットが載る
いまの状況現場の話を聞くかぎり、入る場所は限られるすでに実現している(酒井医療アラエル)
現場から見ると機械を入れ替える判断が要る使い慣れたメーカーの機械のまま、泡が良くなる

取材で「同じメーカーの新型機種に更新する」理由として挙がったのは、職員が操作を覚え直さずに済むこと、利用者が戸惑わずに済むことでした。

だとすれば、後者の道は現場の事情とぶつかりません。メーカーが変わらないまま、泡だけが変わるからです。

※この比較は当サイトの整理です。サイエンスや酒井医療が、今後どう展開するかについて発表しているものではありません。

制度の裏づけと実例はまだない

❓ この取材でも分からなかったこと

  • 「介護保険施設では一般浴・個浴の扱いにしかならない」という話の、制度の裏づけ。公的な資料は、まだ見つけられていません(現場の方の見方として書いています)
  • 人間洗濯機が、実際に導入の検討に出たことがあるか。お話を聞いた会社では、機械浴はトゥッティかカトレアの2択でした
  • 新しい事業所なら本当に入るのか。これは見立てで、実例はまだありません

1人の方のお話です。ほかの事業者や施設では、違うことがあります。

現場はそれぞれの条件で選んでいる

これから入浴設備を検討する施設の方へ、一行だけ伝えるとしたら何と言いますか。そう聞きました。

返ってきたのは、こうです。

各事業所、事業所の予算や対象利用者のADLの状況に応じて、適切に導入されていると思うので、私から特に申すことはありません。

売り込む言葉も、警告の言葉も出てきませんでした。すでに、それぞれの現場が、それぞれの条件で選んでいる。

外から「これがいい」と言う筋合いではない、という答えだったのだと思います。

当サイトは今後も、この機械を追いかけます。

ただ、現場には現場の理屈があり、それは価格表からは見えないということを、この取材で教わりました。

書いてきたことのうち、ずれていた部分は直していきます。

検討中の施設の方へ:資料を無料でお送りします

費用の一覧・使える可能性のある補助金・設置条件・メーカーへ聞く12項目をまとめた資料を、無料でお送りします。
入浴設備は販売していないので、売り込みも営業のお電話もしません。
ご希望の方は info@mirai-sentaku.jp へ「資料希望」とだけお送りください。

取材にご協力いただいた方に、あらためてお礼を申し上げます。
出典:酒井医療株式会社 公式サイト(カトレア製品ページ)/オージー技研株式会社 トゥッティ仕様書/株式会社サイエンス 公式サイト(ミラブル アシストバス製品ページ・2026年8月16日確認)。

次に読む

新しく作る事業所で考えるなら、補助金の対象になるかは都道府県の窓口で確かめてください(介護施設で使える補助金)。買える店と保守は、アシストバスの記事にまとめています。

※当サイトは以前、社会実装版について「145万円なら機械浴槽の更新の予算感で射程に入る」と書いていました。機械浴とは使う方が違うので、書き分けました。